
車の中は0度。冷気は下から上がってきます。脱いだズボンで、ベッドの隙間を防いでいます。
朝っぱらから、夕暮れの雰囲気。
助手席に積んだ六本の予備タイヤを荷台に重ねて、ガソリンスタンドのお兄ちゃんに挨拶し、出発。

今日の天気は、曇り時々、煙。

曇りのち、煙。
警察官に停められました。
こっち来いと手招きするので、車にYukoを残して警察官の後ろを追います。
The 取り調べ室って感じの飾りのない狭い部屋。
何も置いていない机を挟んで、警察官と向き合いました。
サシです。
何をされるのだかわかりませんが、痛くしないでください。
よろしくお願いします。
しかめっ面でパスポートを開いたり閉じたりする警察官。
何かを考えているようです。
「日本のお金は、イエンと言うのか?(想像訳。以下同)」
「ダー(はい:露語)。エンと呼びます」
精一杯ウブな笑顔で返答します。
「アメリカはドル、ヨーロッパはユーロ、ロシアはルーブル、中国は元。そして日本はイエン」
「ダー」
「わたしは、いろいろな国のお金を集めている」
彼は上着をめくり、内ポケットにお金でも入れる真似をします。
「ダ、ダー」
ストレートど真ん中のわかりやすいジェスチャーです。
わかりましたと応えたら負けるので、空気の読めない風のつぶらな視線を送ります。
間があきます。
うーむ困ったなこのイポンスキーは、……みたいな顔をして、彼は繰り返します。
「アメリカはドル、ヨーロッパはユーロ、ロシアはルーブル、中国は元。そして日本はイエン」
「ダ、ダー」
わかったかなイポンスキー。
あなたの気持ちは痛いほどわかるけど、沈黙は金なのです。
とはいえ沈黙に耐えきれなくなり、財布を開いて見せました。
どうせ一銭もお金が入っていません。
小さなため息をついてパスポートを返してくれました。
力強く握手をし、スパシーバ(ありがとう:露語)。
これで無罪放免かと思いきや、別の警察官が隣のドアを指差します。
扉を開けるとカウンターの奥に座った警察官が、スマホのGoogle翻訳を突きつけます。
Google翻訳「保険証書を出しなさい」
「持っていません」
Google翻訳「罰金です」
「ごめんなさい。いますぐ保険に入ります! どこで売ってますか?」
G翻「今日は日曜日なので、買えません」
「では今晩はここで寝ます。明日買いに行きます!」
G翻「私たちは日本人が好きです」
「すみません。意味がわかりません」
G翻「私たちは日本人が好きです」
そう言って、パスポートを返してくれました。
力強く握手をし、スパシーバ(ありがとう:露語)。
罰金はどうなったのでしょう。
警察を後にして十分後、また警察官に捕まりました。
「保険証を出しなさい」
「持っていません」
くどくどと説明やら説教やら小言を受けたような気がしますが、面倒になったのでしょう、無罪放免となりました。
力強く握手をし、スパシーバ。

今夜のお宿は、駐車場(無料)。

晩飯を食べたカフェと隣のホテルのオーナー、ア◯フ。アゼルバイジャン人のイスラム教徒。ロシア語、トルコ語、 アゼルバイジャン語、カザフスタン語に堪能な戦闘機の元パイロット。英語は話せません。Wi-Fiが繋がらないので、Google翻訳なしの会話。さっぱり意味がわかりません。4人兄弟。ロシア空軍→アルメニア空軍→アゼルバイジャン空軍と転職し、三年前に退職。スマホの写真を見せてくれたけれど、ぜんぶ彼女だと大威張りです。どの女性も40歳前後の小太りで、珍しいくらい一貫した趣味の持ち主。普通こんだけたくさん彼女がいたら、ひとりくらいは違うタイプに浮気するよね。
君の女はYukoだけか!とYukoの前で笑われました。
め、面目ありません。。。
posted by 44と書いてyoshiと読みます。
- 朝→ 外食:カフェ(535テンゲ/231円)卵焼きに醤油
- 昼→ 外食:カフェ(900テンゲ/390円)プロフの米がカタイ
- 夜→ 外食:ア◯フのカフェ